ご相談の多いお悩み
睡眠不足による症状
いびき外来へのご相談でもっとも多い自覚症状は「日中の眠気」です。眠気によって、日常生活に支障をきたしてしまう方は少なくありません。
眠っているとき
- いびきをかくことが多い。
- 息が止まって、むせて起きることがある。
- 呼吸が乱れる。
- 息苦しくて、目が覚める。
- 毎晩、トイレに起きることが多い。
家族から指摘されるケース
- 大きなイビキがうるさい。
- 突然、呼吸(イビキ)が止まっていた。
- 寝ているときに、むせていた。
など
生活を共にする家族から、指摘をうけたことがきっかけでご来院される方も多いです。
日中、起きているとき
- 強い眠気に襲われる。
- 居眠りしてしまうことが多い。
- 車を運転中に、眠くなることが多い。
- 朝方、頭痛を感じることが多い。
- 朝起きて、疲れていることが多い。
- 頭がぼーっとして、集中できない。
- いつも全身の倦怠感がある。
上記のお悩み・症状に該当する方、心あたりのある方は、一度当院へご相談ください。
睡眠の状態に関するセルフチェック
エスワープ眠気尺度問診票(ESS:Epworth Sleepiness Scale)を用いて、眠気の評価測定ができます。
合計点が11点以上の場合は日中の眠気が強いと考えられます。しかし眠気の感じ方には個人差があるため、眠気を過大もしくは過小評価し実情に見合わないこともあります。
点数が低くても眠気などの自覚症状があったり、ベッドパートナーに「いびき」や「無呼吸」などを指摘された場合は、早めの受診をお勧めいたします。
睡眠時無呼吸症候群/SASとは
睡眠障害によって、日中に支障をきたす疾患
睡眠時無呼吸
睡眠中に気道が塞がってしまい、呼吸(口や鼻の空気の流れ)が10秒以上停止する状態のことをいいます。ほとんどの方が、イビキを伴います。
睡眠時無呼吸の症状を抱える日本人患者は300〜400万人とも言われておりますが、適切な治療を受けている患者さんは40〜50万人程度で、およそ10人に1人のみという実態です。
睡眠時無呼吸症候群/SAS
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠時(Sleep) 無呼吸(Apnea)症候群(Syndrome)の頭文字をとって、SAS(サス)とも呼ばれます。睡眠中に1時間あたり5回以上無呼吸状態や低呼吸状態に陥ってしまい、しっかりと熟眠できずに、日中などに支障をきたしてしまう疾患です。
SASの患者さんに多く見られる特徴
これらに該当する方すべてが、眠時無呼吸症候群になるわけではありません。
- 肥満傾向にある
- 下顎が小さい
- 舌が大きい
- 鼻の詰まりが強い
- 軟口蓋(※)が長い
などが挙げられます。
※ 軟口蓋とは
歯の内側を口蓋(こうがい)といい、口蓋の前方にある硬い骨の壁を硬口蓋(こうこうがい)、口蓋の後方にある骨が無い柔らかい部分を軟口蓋といいます。口蓋の底部に、舌が位置します。
睡眠時無呼吸症候群の早期改善を
このページでは、ご相談の多い悩み・症状をはじめ
- 睡眠時無呼吸がなぜ怖いのか(リスク)
- 睡眠時無呼吸症候群の検査法、治療法
などをまとめています。
現在気になる症状をお持ちの方、心当たりのある方は、一度、当院へご相談ください。
ちば耳鼻咽喉科クリニックでは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の方の検査・治療を行なっています。
SASのリスク
日常生活に支障をきたす
仕事への影響
十分な睡眠がとれないことで、日中、強い眠気に襲われ、思うような日常生活が送れなくなってしまう方がいらっしゃいます。「頭がぼーっとしてしまい仕事が手につかない」と頭を抱えている方も少なくありません。
仕事中に居眠りをしてしまう、大事な会議で眠ってしまうなど、業務にも支障をきたします。
交通事故への影響
近年、眠時無呼吸症候群の罹患者が起こす交通事故(居眠り運転)が問題視されています。運転中に強い眠気に襲われてしまうことで、交通事故を起こす危険性が著しく高い傾向にあります。車での事故や電車のオーバーランなど、睡眠時無呼吸症候群の関与が判明した事例も多いです。
あなた自身が命の危険にさらされないために、そして他の人を巻き込んでしまうというような最悪な事態にならないように、決して軽視することなく向き合うことが大切です。
合併疾患、その他の病気
睡眠時無呼吸症候群(SAS)で危険視されるのは、様々な合併症を引き起こす可能性があるという点です。
主な合併症
- 高血圧
- 多血症
- 不整脈
- 虚血性心疾患
- 心不全
- 脳血管障害
- 糖尿病
- 肺高血圧症
- 勃起障害(インポテンツ)
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、そうでない患者さんと比べて、様々な合併症を引き起こしやすいことがわかっています。
心臓病や脳血管疾患、血管・代謝の病気の発症や悪化に、広く関与している傾向があります。
上記の疾患の他に、命に関わるほどの病態でなくとも、
- 寝不足によるストレス
- 抑うつ状態
- 男性の場合は勃起障害 など
様々な形で身体に悪影響を及ぼし、生活の質を低下させます。
いびき外来/検査・治療
検査から治療までのながれ
早期診断、早期治療を
睡眠時無呼吸症候群は、適切な治療を受けることによって改善できる病気です。
できるだけ早く診断し、治療を始める必要があります。
STEP1:問診・スクリーニング
自覚症状のほか、日常生活への支障を確認していきます。
STEP2:基本的な検査
自宅で簡易検査を実施します。問題がなければ、精密検査及び治療の必要はありません。
STEP3:確定診断
自宅での簡易検査の結果によっては、睡眠専門医療機関で入院し精密な検査を実施します。
STEP4:治療法の決定
検査結果により治療法を選定していきます。
STEP5:治療後の検査
治療後の効果判定を検査します。
睡眠時無呼吸症候群の検査
1:簡易型による自宅検査
ご自宅で簡単に検査することができます。この検査では睡眠中の呼吸の状態、血液中の酸素飽和度などを同時に測定し、無呼吸低呼吸の有無を知ることができます。
テープでセンサーを貼り付け、本体のボタンを押して検査をスタートさせます。あとはいつもどおりお休みいただくだけです。検査結果によって精密検査が必要となります。
記録項目
- 鼻:口鼻の気流、いびき音
- 指:血中酸素飽和度など
2:精密型による入院検査
自宅での簡易検査の結果によっては、睡眠専門医療機関に入院し精密な検査を行います。(睡眠ポリグラフィー検査)
この検査では睡眠中の呼吸や脳波、血液中の酸素飽和度などを同時に測定し、睡眠の深さや質と呼吸の状態を調べ眠っている状態を調べる検査のため、1泊程度の入院が必要となります。
頭や胸腹、脚などに電極やセンサを付けますが、痛みなどはありません。日頃ご家庭でお休みになるようにリラックスして検査をお受けいただきます。
ソムノスクリーンの場合は無線システムを採用しており、自由に行動できるため、一人でトイレに行くことも可能です。
記録項目
- 頭:脳波
- 顎:顎の筋電図
- 鼻:口鼻の気流
- 腹:腹の動き
- 脚:脚の動き
- 眼の周り:眼球運動
- 喉:いびき音
- 胸:胸の動き、心電図
- 指:血中酸素飽和度
- 鼻:口鼻の気流、いびき音
- 指:血中酸素飽和度 など
睡眠時無呼吸症候群の治療
① CPAP(シーパップ)療法
CPAPとは
CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)は、中等症以上の閉塞性SASに対する治療の第一選択として使用されています。SASがまねく高血圧症や狭心症、心筋梗塞といった循環器の病気など、合併症を予防することもできる治療法です。重症のSAS患者さんがCPAP療法を行った場合、治療をしなかった患者さんよりも長生きをすることも分かっています。
CPAP療法は、鼻から空気を送り閉塞した上気道をおし広げることによって睡眠時の無呼吸をなくし、酸素不足を解消することができる治療法です。
CPAP療法の成果
現在では、CPAPを使うと、ほとんどの患者さんが使ったその日から睡眠の質を向上させることができます。
いびきをかかなくなり、朝はすっきり、昼間の眠気も軽くなり、消えることもあります。
CPAP療法を選択する際は、医師の説明をよく聞き、必ず指示に従いながら治療を進める必要があります。CPAPは正しく継続的にご使用いただくことが大切です。
② その他の治療法
マウスピースの装着
就寝時にマウスピースを装着します。下あごを前方に固定することで、狭くなった上気道を広げます。この方法によって、いびきや無呼吸の症状を抑えることができます。マウスピースは患者さんの口腔内に合わせてオーダーメイドします。
軽度〜中等症までの閉塞性無呼吸タイプに効果的であるといわれています。重症の方には、別の方法を推奨しています。
外科的手術
アデノイド(咽頭扁桃)肥大や口蓋扁桃肥大によって上気道の狭窄・閉塞が起こっている場合も考えられます。外科手術によって摘出することで、睡眠時無呼吸症候群の症状が緩和させることができます。
継続的な生活習慣の見直しを
睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣の改善もとても重要です。
適正体重の維持
「肥満」は睡眠時無呼吸の大敵です。規則正しく偏りのない食事を心がけ、適度な運動を心がけながら生活習慣の見直しを図りましょう。
鼻の疾患の治療
日頃から鼻がつまっているという方は、口呼吸になりがちです。これが睡眠時無呼吸症候群を悪化させる危険因子となります。鼻の疾患をお持ちの方は、しっかり治療をしましょう。
検査・治療の費用
CPAP治療は健康保険が適用されます
健康保険の適用を受けるために、毎月一度は必ず診察を受けてください。
検査
簡易検査 | 約 3,000円/1回(3割負担の場合) |
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治療
CPAP治療 | 約 4,500円/月(3割負担の場合) |
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SASに関する補足情報
SASの定義・重症度
SASの定義
睡眠中に10秒以上呼吸が止まることを「無呼吸」といい、呼吸が浅くなることを「低呼吸」といいます。
SASの定義は、一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上無呼吸が30回以上起こるか、睡眠1時間当たりの無呼吸や低呼吸が5回以上の場合を言います。
SASの重症度
睡眠1時間あたり10秒以上の無呼吸・低呼吸(呼吸が浅く・弱くなる)状態が発生する回数を示す指数を「無呼吸低呼吸指数/AHI:Apnea Hypopnea Index」といいます。この指数によって重症度を分類します。
日中の眠気などの症状があり、AHIが5回以上認められた方は、OSAS(Obstructive Sleep Apnea Syndrome:閉塞型睡眠時無呼吸症候群)と診断されます。
SASの種類と原因
※ 下記の他にも、閉塞性と中枢性が混在する「混合性SAS」と呼ばれるものもあります。
閉塞性SAS
上気道の閉塞により気流が停止するものです。無呼吸でも胸や腹の動きは認められ、いびきも生じます。SAS患者さんの多
くはこちらのタイプです。
太った人に多いと思われがちですが、日本人の特徴である「短く平らな顔」「小さなアゴ」「喉が咽頭近くにある」などにより、太っていないから関係ないと判断するのは禁物です。
中枢性SAS
脳からの呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の機能異常によるもので、SAS患者さんの数%といわれています。
閉塞性SASとは異なり気道は開存していますが、胸や腹の呼吸努力がみられません。原因はさまざまですが、心臓の機能が低下した方に多くみられるとされています。